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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「クライング・ゲーム」

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 (原題:THE CRYING GAME )92年作品。元IRAの構成員(スティーヴン・レイ)と、彼と親しい関係にあったイギリス当局のスタッフの“恋人”との、危険で甘美な恋を描いたサスペンスタッチのラヴストーリーで、封切り当時はアカデミー賞の候補になるなど、かなり評価は高かった。しかし、実際観てみると期待はずれもいいところだ。

 この映画の一番の売り物は、例の“秘密”なのだろうが、“ヒロイン”を演じるジェイ・デヴィッドソンがその頃のオスカーの助演男優賞にノミネートされた事実ですでにみんな知っている。それなのに公開していた劇場ではワザとらしく“絶対ほかの人には教えないでください”と、ロビーはもとよりトイレにも張り紙をしていたのだから苦笑してしまった。私なんか、ひょっとしたらまた別に“秘密”があるのではないかと思ったほどだ。

 それでは観客が“秘密”を知らなかったと仮定したら、この映画は衝撃的なものとして受け取られて評判を博しただろうか。それはちょっと有り得ないと思う。話の運び方に納得できないものがあるからで、物語にカタルシスが存在せず、映画そのものの出来も上等ではないからだ。

 第一、あんな甘ちゃんな工作員がいるわけがない。人質に同情するような奴は即刻追放だろう。フォレスト・ウィティカー扮する国家公安官もやたらメソメソして感心しないが、主人公が組織を逃れてデヴィッドソンと一緒になるくだりは、当然サスペンスフルに盛り上げてくると思ったら、これが全然緊張感がない。要人暗殺を未遂するシーンにいたっては言語道断。同時期に封切られたフィリップ・ノイス監督の「パトリオット・ゲーム」では国際的大規模テロ集団ぶりを見せつけたIRAが、いつからこんな街のチンピラまがいのことをやるようになったのか・・・・。

 テロリストがイデオロギーを捨てて男同士の純愛に走る展開、そして“こうなれば絵に描いたようなメロドラマだな”と思っていたラストシーンをシラっとやってしまう無神経さから、“これは政治の世界が終わりを告げ、よりパーソナルに次元にシフトしたことを示している”と言う評論家もいたようだが、私にとってそんなことはどうでもいい。もっと盛り上げてほしいし、もっと観客をゾクゾクさせてほしい。プロットを二転三転させて息もつかせなくしてほしかった。“彼女は男でした”なんて枝葉末節の“秘密”をひけらかさないで、本筋で勝負すべきだった。

 監督はニール・ジョーダンだが、彼のフィルモグラフィの中では上位にランクされる作品ではない。ただ、ボーイ・ジョージによる主題歌は良かった。

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