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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「パリところどころ」

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 (原題:PARIS VU PAR)65年フランス作品。同年のカンヌ国際映画祭で上映されたオムニバス映画。パリを舞台に、ヌーヴェル・ヴァーグの気鋭の監督6人が当時のパリ市民の哀歓をスケッチ風に描く。製作は当時24才だったバルベ・シュレデール。タイトルにはすべてパリの地名が付けられている。

 堅物男がふとしたトラブルに遭い、あれこれ悩む姿をコミカルに描くエリック・ロメール監督の「エトワール広場」。ジョアンナ・シムカス扮するヒロインが、二人の男に取り違えた手紙を出したことから、双方の男にフラれる話を皮肉っぽいタッチで綴ったジャン=リュックゴダール作品「モンパルナスとルヴァロワ」。自称“金持ち”のいいかげんな男に振り回されるアメリカ娘の“災難”を面白おかしく描くジャン・ドゥーシュ監督の「サン・ジェルマン=デュ=プレ」など、それぞれ見どころのある作品が並んでいるが、一番衝撃を受けたのがジャン・ルーシュ監督「北駅」である。



 ナディーヌ・バロー演じるヒロインと結婚2年目になる旦那が朝から口喧嘩している。結婚当時はカッコ良かったらしい夫は、2年で10キロも太り、性格の裏も表もすべてカミさんに知られ、今ではフツーの男に過ぎない。彼女にしても、数年前は謎めいたキャラクターで男を手玉にとったりしていたらしいが、結婚後すっかりネタが割れてしまい、今ではフツーの主婦。

 “秘密がなければ愛情はさめる”と主張する彼女に対し、“相手の性格を包み隠さず知ることによって愛情は深まる”と譲らない夫。議論は平行線のまま、怒った彼女は家を出る。そこへ声をかけてきたのが、ハンサムだが得体の知れない男。追い払おうとする彼女にかまわず、男は自分のエキセントリックな主義信条をまくしたてる。そして、物語は唐突な悲劇であっという間に幕を閉じる。

 15分ほどのドラマだが、なんとカットは3つしかない。そのうち最初と最後のカットは数秒だから、ほとんどワン・カット&ライヴ録音で作られている。つまり主人公が旦那と喧嘩して家を出て妙な男に出会うまで、カメラは切り替わらない。手持ちカメラの臨場感がこの作品の前衛性を強調するが、何よりも終盤いきなりシュールに展開するドラマは、まるで日常生活に突然開いたブラックホールみたいな衝撃を与える。まさに“真昼の暗黒”と言おうか、ヒッチコックにも通じるサスペンスフルな演出が光っている。ルーシュ監督の他の作品も観てみたい。

 公開当時は商業的にも成功したというこのオムニバス映画。19年後の84年には「新・パリところどころ」も作られたという。

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